伊豆高原で、失礼ながら「こんなところに、こんなすごいものが!!」と驚いたのが、「池田20世紀美術館」。
人が少ないのは、作品を一点一点、じっくり観られるのでいいのですが、ちょっともったいない気がします。別荘地を走る「けやき通り」の道沿いにあるため、わかりにくくて、訪れにくいのかもしれません。
でも行くだけの甲斐はありますよ! 東京で展示されたら行列間違いなしの逸品が観られるのですから!
一碧湖からけやき通りを上がってくると、右手にルービックキューブをふたつ並べたみたいな、銀色の四角い建物が見えてきます。これが「池田20世紀美術館」。
駐車場から美術館に向かって左手の階段を上がると、エントランスに出ます。
まず注目したいのは、パブロ・ピカソの晩年作「近衛兵と鳩」。そして、サルバドール・ダリの最初期作「ヴィーナスと水兵」と“偏執狂的批判的方法”に基づく6点の連作「キリンⅠ~Ⅵ」。
ピカソの「近衛兵と鳩」には、“青の時代”や“キュビズム”“シュールレアリズム”を経て彼が行き着いた、カラフルで開放感あふれる境地を見ることができます。
「ヴィーナスと水兵」は、ダリ21歳の作品。画学生時代に描かれたもので、彼の絵画の原点であり、これを見る前と後とでは彼の作品を見る目が変わるのではないでしょうか。ちょうど、“青の時代”の作品を知る前と後とでは、ピカソの作品に対する目が変わるみたいに。
「キリン」は、1936年に発表されたダリの代表的作品「燃えるキリン」から約30年後に描かれた大作。経年による心情の変化と不変の部分を感じとることができるかと思います。
ほかにも、岡本太郎の「太陽の塔」を彷彿させるような、ジョアン・ミロの「海の前の人」、“シャガール・ブルー”がサーカスを幻想世界に転移させる、マルク・シャガールの「パレード」、物憂げな女性の表情が後を引く、モイーズ・キスリングの「女道化師」、画家のその女性に対する恐れと罪悪感が恐いほどに迫ってくる、エドワルド・ムンクの「罪」など、印象的にすぎる作品に出会えます。
企画展を含めると、鑑賞に1時間半ほどかかります。時間に余裕をもって行かれてください。
「池田20世紀美術館」サイト:
http://www.nichireki.co.jp/ikeda/美術館にある喫茶「レジェ」でひと息。こちらのミルクティーは、本格的なロイヤルミルクティー(シチュードティー)。体に染み入る美味しさでした!
美術館から、“伊豆の瞳”と呼ばれる一碧湖(いっぺきこ)へ。一碧湖は火山の火口に水が溜まってできた瓢箪型の湖で、こちらは首側の沼地。
霧に雨が混じるこの日は、静寂に満ちた冬枯れの風景に心がしんと落ち着きました。
木々の枝影が模様を描く水面に、無機物のような輝きを放ちながら泳ぐ鯉。
胴側の湖。晴れた日には青空を映した碧(あお)い水面が広がるのでしょう。
残念ながらこの日は曇った瞳でしたが、誰もいない湖の静けさもまた風情があっていいものです。
一碧湖を訪れた与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑。
「初夏の 天城おろしに 雲ふかれ みだれて影す 伊豆の湖」鉄幹
「うぐいすが よきしののめの 空に鳴き 吉田の池の 碧水まさる」晶子
大室山が噴火した際に、溶岩が湖に流れ込んでできた「十二連島」。こういう、風景にちょっとした変化があるところもいいですね。与謝野晶子の「静かなる 十二連島
(つれじま) 見るままに 所を移す 鴨の連島」の歌、そのままの景色です。
湖畔を散策するうちに雨脚が強くなり、ますます霧が深くなりました。
伊豆・伊東観光ガイド「伊豆の瞳 一碧湖」:
http://itospa.com/nature_park/np_ipekiko/
<伊豆高原の旅>で立ち寄ったお店「楽味屋 まるげん 吉田店」:
食べログ国道135号線沿いの高台にある魚介料理の店。窓から海が望めます。
伊東魚市場仲買人直営店とのことで、確かに刺身も金目鯛の煮付けもとても美味でした! 刺身定食1,100円とお値段もリーズナブル。気軽に立ち寄れるお店です。
「Butter Note(バター・ノート)」:
公式サイト、
食べログ「池田20世紀美術館」から「けやき通り」をさらに少し上がった、通り沿い、左手にあるジャズ・カフェ。窓が大きく、開放的な店内にはグランドピアノと大きな暖炉。月に一度くらいのペースでジャズライブが行なわれるそうです。
お店自慢のビーフシチューも、トマトソースのパスタも、妥協を一切許さず作りこまれた味わい。こってりめなので、一品でお腹いっぱいになります。
グラスワイン(赤)も、ほどよく重みとコクがあり、雑味のないワインが、ほどよく香る温度でサーヴされます。カマンベールチーズとザワークラフトのおつまみ付きで、「考えられてる」と思わずうなってしまいました。
なにより美味しかったのは、紅玉たっぷりの「アップルパイ」! 注文してから焼かれるので、15分ほど必要ですが、この滋味の前にはなんの障害にもなりません!
なぜ「長崎 皿うどん」がメニューにあるのか不思議なのですが、次に伺った時は試してみたいなと思います。
「和(かず)むら 一碧湖けやき坂店」:
食べログ「池田20世紀美術館」から「けやき通り」を一碧湖方面へ下る通り沿い、右手にある、とんかつ、海老フライ、カニクリームコロッケなど、油物料理の専門店。
ヒレカツランチ(1,080円)をいただきましたが、ほろほろと旨味たっぷりのヒレカツ、とっても美味でした! 油物があんまり得意ではない私でも、余裕でいただける量。山盛りの千切りキャベツも食べ応えがありました(笑)。
中に床の間がある、広いトイレも一見の価値があるかも。